「黒部川 下の廊下と水平歩道」劇場

●山 域: 北アルプス
●日 時: 2008年(H20)10月4日−5日
●天 候: 1日目 晴れ
2日目 曇りのち雨
●メンバー: タケさん・ぶぅーちゃん・てる
●コース: −1日目−
扇沢 7:00
黒部ダム 7:14−7:40
黒部ダム下 8:05
内蔵助谷 8:51
黒部別山谷 11:14
(途中で昼食タイムあり)
十字峡 13:22
半月峡 14:24
東谷吊り橋 15:11
仙人ダム 15:29
阿曽原温泉小屋 16:27
−2日目−
阿曽原温泉小屋 8:20
折尾谷 9:57
大太鼓 11:09
志合谷 11:23
(途中で昼食タイムあり)
欅平駅 13:55




このホームページ内に報告している記録を参考にして山に登られる方は
ご自身の判断と責任において行動されるようお願いいたします
報告内容についてはあくまでも参考程度にとどめてください





 
 1ヶ月ちょっと前。携帯へかかってきた一本の電話。タケさんからだった。
 開口一番。「下の廊下へ連れて行ってよ!」。 はぁ?。夜、宴会の席で取った電話だったので、アルコールが会話の内容を麻痺させている。「下の廊下」という言葉が頭の中を駆けめぐるがそのときは理解できず適当にハイハイとだけ答えて電話を切った。
 翌日。タケさんからメールが入り、ことの重大さに気づいた。下の廊下かぁ!。

 僕とタケさんは仕事上のお付き合い。タケさんが山を始めたのは1年前。それを知ってから、一緒に山へ行きましょうと言いつつ時は流れ、この時期まで延び延びになっていた。
 
 この下の廊下を提案したのはタケさんと同じ会社のぶぅーちゃん。水平歩道の魅力に圧倒され、ぜひ行きたいということになったのだ。
 ぶぅーちゃんが山を始めたのが4ヶ月前。タケさんに引き込まれ否応なしに歩いていますといった印象が可愛い。(^^;
 
 そんなお二人の提案だったのだが、正直かなり悩んだ。
 下の廊下は黒部ダムから仙人ダムまで黒部川沿いに設けられた道で、仙人ダムから欅平までの水平歩道を含めると全長27kmの行程がある。
 ドキュメントテレビなどで、切り立った断崖に無理矢理くり抜いた道を歩く画像は有名。

 ここ数年、「危険」と言われるルートを歩いてきた自分にとって、下の廊下はそんな条件にピッタリはまるコースだがまったく頭になかった。というか正直言うと下の廊下の位置さえはっきりと知らなかった。
 
 そんな道を、山歩き始めて1年と4ヶ月の人を連れて歩く、ましてや今まで一度も一緒に歩いたことがないというのもかなりの不安材料だった。
 とりあえずボッカ練習をかねて一緒に歩きましょうということになった。それがこの4週間前に歩いた山上ヶ岳・稲村ヶ岳の縦走だった。
 高低差のある18kmを9時間かけて歩き通した。これで行けると確信した。
 
 下の廊下行きが決定してから阿曽原温泉小屋へ情報収集。
 ちょうど、電話をしたときに小屋の主人から今日からホームページを開設すると聞き、時間を見てはホームページを開く毎日。
 毎年9月下旬頃まで雪渓が登山道を塞ぎ、通行できるのは1年で1ヶ月程度。
 今年も黒部別山谷の雪渓が多く開通したのは9月末だった。
早朝の扇沢駅
 
回送代行業者


 前日。
 仕事を終えて3人合流後、一路信州へ。
 尾張一宮PAで夕飯を取る。3人ともミニみそかつ丼&きしめんのセットを注文。きしめんが美味しい!。
 中央道をすっ飛ばし扇沢に着いたのは午前1時前だった。
 車回送業者の駐車場に停める。車は宇奈月温泉へ回送してもらうようタケさんが手配をしてくれていた。
 
 外へ出ると冷たい空気が身を包む。 空は満天の星空。明日の天気は予報通りいいようだ。
 小宴会後、車の中で就寝。
 
 翌朝5時に起きる。すでにぶぅーちゃんは切符売り場を見てきたそうだ。朝飯を食べて各自役割につく。
 タケさんは回送業者への受け渡し、ぶぅーちゃんはトロリーバスの乗車券買い、僕は改札へ順番並び。
 まだ人は少なく数人が並んでいる程度だった。 話す内容に聞き耳を立てるとほとんどの人は立山への登山客のよう。

 ぶぅーちゃんがやってきて販売窓口にある張り紙を見てほしいという。
 関電から発表された黒部ダムからの各登山ルートの補修状況が書かれていて、それには別山谷の開通時期が10月7日となっていた。
 むむむ…。どういうことだ?。でも、阿曽原温泉小屋のホームページで別山谷の雪渓状況も画像で確認した上で、行けると判断したからここまでやってきたのだ。今更引けるかい!。
 関西電力発行の補修状況
 
  拡大図

 

公演中の「黒部の太陽」   改札間近の行列   大型の荷物は最後尾のトラックへ積む


展望台から立山方面を眺める


  
 改札が始まる頃には数百人の列になっていた。
 ホームに上がり大型荷物は専用のトラックに載せ、人はトロリーバスに乗る。
十数年前に黒部ダムへ観光できて以来の乗車。

 十数分で黒部ダムに到着。下の廊下へはホームを突き進むのだが、せっかくなのでダム展望台から全体を見てから出発しようということになった。
 160段あまりの階段はちょうどいいウォーミングアップ?。

 展望台に出るとド快晴で真っ正面に立山が見える。ダムの観光放水も行っていてその迫力もすごい。

 これから進む黒部川下流を眺める。大タテガビンの迫力ある山容が正面に構える。この川沿いを歩くのかと思うとゾクゾクしてくる。

 出発する前に用意してきた栄養補助食品Powerbarのパワージェルを飲む。
 2ヶ月前、木曽駒ヶ岳を登ったとき足が痙り、フォローにともらったカーボショッツ。
 これのお陰で回復できたことから、今回の出発前に探していた。ところがどこにも売ってなく、仕方なく(失礼(^^;)、同業他社の商品Powerbarを購入したわけです。
 今回は風味を4種類持ってきた。まずは「梅」。正直カーボショッツは飲み込むように飲まなければ飲めたもんじゃなかったが、これはいける。さて効果はいかに?。
大タテガビンの方角が僕らの進路
 
PawerBarの効果はいかに?





旧日電歩道へはトロリーバストンネルを進む



 登ってきた階段を戻り、再びホームへ。先へ進むと「カレ谷」と書かれた道標があった。カレ谷?。どこやそれ?。とりあえずそちらへ進むことに。
 進むと旧日電歩道と書かれた道標があり一安心。川岸へ向かってズンズン下る。
 川岸へ到着。渡し板を歩き対岸へ。下から見るダム放水も迫力があり、細かいしぶきが空中を浮遊している。マイナスイオンがいっぱりありそう。





 

 

 左岸の自然林帯を歩くこと30分。岩壁に刻まれる一筋のライン。これが夢にまで見た(見てないけど)旧日電歩道!。とうとうやってきたんだと気持ちが高揚してくる。
 しかし、これを見たぶぅーちゃんは一言「きてしもた。気分悪くなってきた」と。「ここへ来たいと言い出したのはあんたやろー!」とタケさんと二人で突っんだのは言うまでもない。(^^;
 遠目に団体が歩いているのが見える。結構な人数。それを見たタケさん「小屋にビールが無くなる!急げぇー!」。どこまでも賑やかなお二人。(^^;






 内蔵助谷に到着。
 内蔵助平との分岐にあたるのだが、下の廊下へ進む道には「通行禁止」のプレートが下がっている。事前に阿曽原温泉小屋のホームページで確認していたので、何の躊躇もなくプレートをくぐり進む。
 小屋の見解とここを管理する関西電力との見解の違いか?。扇沢の窓口で見た開通時期である10月7日まではこのプレートはかかったままかもしれない。
 内蔵助谷では男性が二人休憩していた。一人はぶぅーちゃんよりご立派な体格。 すでに後悔でいっぱいのぶぅーちゃんの肩をたたいて、あんな人(失礼(^^;)も歩いてるんだよと諭す。全然納得はしてなかったが。(^^;




内蔵助谷の分岐は「通行禁止」
プレートをくぐった
(※判断は自己責任です)


壮大なスケールの新越沢








 旧日電歩道は徐々に高さを増し、歩く幅も狭くなる。場所によっては丸太4本を束ねた幅だけの場所もあり、命綱は太いながらも針金2本のみ。それと同時に対岸から
迫る大岩壁の威圧もすごく、さらに恐怖感が増す。
 しかし、タケさんと僕にとってはその恐怖感が楽しい。整備された安心感と一歩間違えれば…との間を歩くスリル。
 逆にそのスリルに溺れている方が一人…。「来るんじゃなかったー!」と真顔で訴えるぶぅーちゃん。(^^;











一つ目の高巻き桟橋は不発


雪渓の残骸



 黒部川にわずかに残ったスノーブリッジがかかる。
 かれこれ半年以上前に積もった雪なのにまだこれだけの形として残っているというのは信じられない。
 そのスノーブリッジを巻くために高巻きの足場が組まれていた。
 阿曽原温泉小屋のホームページに載っていた高巻き桟道だ。ホームページで事前に確認していたので、タケさんと僕はこれを歩くのを楽しみにしていた。が、ここの高巻きはスノーブリッジが溶けて通行の必要なしということで、通常の登山道を歩くようプレートが掲げてあった。落胆するタケさん。
 逆に安堵したのはぶぅーちゃん。少し笑顔が戻った。
 と安心したのもつかの間。しばらく歩くと、さらにすごい雪渓が川の上に乗っかっている。その横には…。あった、高巻き桟橋!。岩場の地形をうまく利用し見事なルートを描いている。
 やった!やった!と喜ぶタケさんとは対照的に幽霊のように消え入りそうな姿のぶぅーちゃん。(^^; ほんまわかりやすいお人。
 雪渓で反響する黒部川の激流の音を後ろに聞きながら、一歩一歩梯子を登る。
 振り返ると登ってきた高さと風景に驚く。いつ崩れるかわからない雪渓が黒部川を覆う。
 さて、問題はぶぅーちゃん。登ってくるのは問題なかったが降りてくると、もちろん笑顔などなく足が小刻みに震えている。血の気がない。(^^; 



黒部別山谷の出合が見えてきた


黒部別山谷に雪渓が残るため高巻く



 そして迎えた雪渓。黒部別山谷だ。
 ここの雪渓のために下の廊下の開通が左右される。
 雪渓へは桟橋が渡されている。深さはゆうに6mはある。手すり代わりの針金もあるので慎重に歩けば問題ない。
 ちなみに僕らが歩いた2日後には早くも雪渓の姿が変わったようで、梯子は下から登るように換えられていた様子。
 
 雪渓にはこれを遡行するのか、ガチャ満載のクライマーが下調べをしていた。
 反対側の対岸には遭対協の文字が入ったスピーカー持つ屈強そうな男性が何やらチェックしていた。
 どうやら阿曽原温泉小屋の関係者らしい。僕らにも阿曽原温泉小屋で泊まるのかどうか聞いてきた。テント泊者の状況を聞くと今日は少ないらしい。

 

黒部別山谷に埋まる雪渓を渡る
雪渓を渡るシーンをYouTubeに載せています
 アイコンをクリック!


登坂なのか調査なのかクライマーが二人


下流側には阿曽原温泉小屋の方が入山者をチェックしていた










 タル沢出合付近でお昼となり、休憩する。
 ぶぅーちゃんは先ほどの高巻き桟橋がかなり堪えたと見え、おにぎり1個と小食。ため息混じりに「えらい〜 精神的に参るぅ〜」と地面を見ながら独り言を放つ。(^^;
 僕はここでまたPowerbarを飲む。今度は「グリーンアップルフレーバー」。相変わらず食感はイマイチだが、味はいける。これで最後まで行く。



 
命綱の針金 支点はアンカーボルトが打ってあった


タル沢出合手前のゴルジェ



 白竜峡手前のタル沢出合手前はゴルジェになっていて両岸が迫る。川床から歩道まで10mはあると思うが、増水時に流れた流木の残
骸が所々歩道に残っている。増水するとここまで水位があがるのかと思うと恐ろしい。

 「高熱隧道」にこんな記述があった。
 周りの山から雪崩が発生し、岩石や木々と共にこの黒部川へ堆積する。川の水は堰き止められるがやがて耐えられなったそれらが轟音と共に一気に下る。
 下流へ流れた融雪水は富山湾へ流れ込み、温かい水と衝突し蜃気楼を見せる。

 歩道に残る流木は雪崩れた時にどこからか削り取られた木かもしれない。富山湾で起きる蜃気楼はこの黒部川の水が関係していた。
 自然ってすごい!。その一つ一つを歩きながら感じ取る。

 先へ進むとスノーブリッジがあり、当然のようにまた高巻き桟橋が出てきた。 沈むぶぅーちゃん。(^^;
 

 







 景観は素晴らしいが同じ風景になれ、高さにも慣れてきた。いわゆる中だるみ。
 タケさんは先を歩き、ぶぅーちゃんはずっとしかめっ面のまま。黙って歩き続ける。
 途中で小さな沢が横切る。ここで休憩。沢の水をいただく。黒部から来て初めての水場。
 その場にいたおじさんから「ここの水は飲めますか?」と尋ねられた。
 今朝、5時過ぎに黒四ロッジを出発し阿曽原温泉小屋へ向けてゆっくり歩いてきたということだった。しかし、僕らのペースでも遅い方なのに、おじさんのペースだと阿曽原温泉小屋に着くのは何時頃になるのか。少し心配になった。





下流から上流(白竜峡)を望む


行程唯一の濡れ場



 下の廊下、水平歩道の中で唯一濡れる場所がある。十字峡手前にある沢だ。高さのある岩面を流れ落ちるので水量が多いとかなり濡れる。幸い、この日は水量が少なく少し濡れただけで済んだ。

 再び歩き始めてしばらく歩き、やっと十字峡に到着。
 川床まで降りられると知っていたが、どこから降りるのかわからず、また吊り橋の手前の広場では人で賑わっていたので休憩する気持ちなれず、そのまま素通りした。
 あとでもっとゆっくり見ておけばよかったと思ったが後の祭り。



十字峡の吊り橋


手前が剱大滝方面
右が黒部ダム方面
左が仙人ダム方面
奥が爺ヶ岳方面






 

再び、旧日電歩道は川床を離れ高度を上げる。岩盤をコの字型に削り取った道になる。環境問題が取りざ
たされている今、同じような工事をしようものなら大問題になること間違いなし。あの頃だから許された人工
物。戦前の傑作として今に残る。












  

S字峡


会話はフィクションとノンフィクションの中間です


所々ある岩室




 遠目の対岸斜面に将棋の駒のような物を発見!。黒四発電所から延びる送電線出口だ。
 近づくにつれてその巨大な将棋の駒は造形をあらわにしてくる。
 この地下に巨大な発電所があるそうだが、想像できない。
 ちなみにこちらを見ていただくと発電所の規模がわかります。
 「水力発電所ギャラリー」のホームページへ



将棋の駒じゃなくて送電線出口


 送電線を支える鉄塔を巻くように旧日電歩道が下っていく。
 そんな僕らを黒部別山谷でカウントしていた男性が小走りに追い抜いていった。

 吊り橋が見え渡る。長くて高い吊り橋で下を見ると結構怖い。
 高いところが苦手なぶぅーちゃん。すでにここまででも疲労困憊の上にこの高さに「まいった!。ごめんなさい!。バテた」と意味があるような無いような言葉を吐く。(^^;
 
 対岸へ渡り、すぐに工事用トンネル?と使われていないと思われる建物があった。どこへ繋がっているのかわからないが興味津々。もしかしたら高熱隧道にあった横坑か?。






会話はフィクションです


東谷吊橋

 

 
   
 



 進む道には落石(雪除け?)よけのトンネルが川沿いに続き、しばらく歩くと仙人ダムにたどり着いた。
 こんな奥地に乗用車があった。前後の旧日電歩道の内容を思うと不思議だがトンネルを通ってきたのか、はてまたヘリコプターで運ばれてきたのか。
 仙人ダムを渡り少し休憩。すぐ近くを関西電力専用鉄道の橋が渡り、その近くにいる作業員らしき人が珍しそうに僕らを見ている。
 仙人ダムからは登山者用にコースの案内板が随所にあり、それに従って進む。



社員運搬用自動車?


登山者用案内板





 建物のドアを開け、細く暗い通路を進むと、先ほど見えた鉄道橋に出た。
 軌道の阿曽原温泉小屋側はトンネルになっていて硫黄の臭いと熱気が体を覆う。
 この奥に摂氏166度を記録した高熱隧道の根幹があり、多くの労働者が犠牲になったと思うと感慨深かった。
 運がよければ専用鉄道の走る姿を拝めるそうだが、生憎このときは来なかった。



 
(1)ダムからすぐの入口 (2)案内板に従って通路を進む
   
(3)細く長い通路を歩く   (4)猿がいた
檻の中に人間がいるよう


鉄道橋(上流側)


専用軌道(阿曽原温泉小屋方面)





 通路を出て広場に出ると、この場所には似つかない大きな建物があった。
 5階建ての建物で外観は古いが室内は電気がついていて、ちょうど1階の厨房ではコックさんが忙しそうに動いていた。



丸太階段が急坂の合図




急坂に声も出ない



 道はその建物の裏側を周り、ここから最後の急坂が始まる。最後にしてこの坂にはかなり堪えた。
 ぶぅーちゃんがかなり遅れたので、僕だけ先にテントを張るため阿曽原温泉小屋へ向かうことにした。
 夕暮れ森の中は暗く、一人で歩くには心許ない。しかも途中で50mほどのトンネルもあり、(幽霊が)出るなよ〜出るなよ〜と祈りながら歩いた。(^^;
 最後に急な下りを終えてやっと阿曽原温泉小屋に到着。



阿曽原温泉小屋


テン場




 この小屋の名物主人が出迎えてくれた。温泉とテン場で合計一人千円。え?。
温泉って300円じゃなかったっけ?。今期から500円に値上げされている。値下げ値下げのご時世になぜ?。
 そして、明日の黒部峡谷鉄道のこと。11時台の列車に乗らなければあとは満員らしいので、それに合わせてこちらを出た方がいいと言われた。
 小屋泊まりの人も2人以外は全員、朝食なしで早立ちするとのこと。
 僕らは事前に黒部峡谷鉄道へ問い合わせて、予約客ですべて満員にはしないと聞いていたので、そちらを信じて朝はゆっくり出ることに決めている。






 ン場は事前の情報通り5組だけの少なさ。
 テン場の横にはトンネルの入口があり、これが本坑へ繋がる横抗かな?。
 関係者以外、中へ入れないようフェンスがあり、その中にはビール缶等のゴミが山積みしてあった。
 専用鉄道で食材や飲み物、そしてゴミを運んでいるのだと推測できた。


 荷物を下ろしテントを張り、タケさんとぶぅーちゃんを迎えに来た道を戻る。…と思ったらすでに小屋前に到着していた。
 自動販売機の500mlビールを5本買い、テン場へ向かう。
 ぶぅーちゃんは座り込んで、ビールをまず1本、美味しそうに飲み干す。
 タケさんも本当にお疲れ様。

 温泉に浸かってゆっくりしようと露天風呂へ向かう。この時間帯は交代制になっていて17時から18時は男性。
 スリッパに履き替え5分ほど下ると露天風呂が見えた。すでに満員。 しかし、すぐに人が出てくれたので入れ替えにはいることができた。
 ビールを片手に浸かる露天風呂。一度やってみたかった。グビッと一口。うまいぃぃ!。(>_<) 今日一日歩いたご褒美。
 あまり飲める口ではないが、何故か温泉に浸かりながら飲むと酔いが弱い。あっと言う間に500mlビールが空いてしまった。
 このすぐ横にはトンネルがあり、そこから濛々と蒸気が出て行く。その中からホースで引かれたお湯がこの湯船に注がれる。反対側からは沢の冷たい水がホースを伝って注ぎ、湯船でうまく温度調整されているみたい。



 


 テントに戻って夕食の準備をする。
 今夜はカレー鍋。専用ダシの中へ豚肉、大根、にんじん、シメジ、白菜、そしてパックのご飯を入れる。
 カレーの風味が食欲をそそる。
 疲れた体にカレーって美味しい!。余ったら困るなーという考えは取り越し苦労だった。あっと言う間に空っぽ!。
 酒豪のお二人もさすがに今夜は疲れが回っているようで、ビールを買い足す元気もなく、8時前に就寝。
 
  10時頃にトイレへ。今夜も夜空は満天の星空。明日のお天気は良くないということだったが、この星空を見る限りでは信じられない。
 再び寝袋へ。

 夜中…。ふと目が覚めてそれからなかなか寝付けなかった。
 そんなとき、テントの外からそっと足を押すような感覚。風のようにテント全体を押すのではなく部分的に押された。怖くなって少し身動きが取れずじっとしていたが…。これってもしや…?。(>_<)




 






 10月5日(2日目)


露天風呂案内表示
※値段に注目



 朝4時頃。
 外でごそごそ動く音で目が覚めた。早立ちをする人が動き始めたのだ。
 僕らはもう一眠り。
 7時過ぎ。やっと起きて、露天風呂へと向かう。
 ちょうど、露天風呂へ向かう道で、昨日水場で出会ったおじさんと再会した。心配していたおじさんだ。
 昨日は結局、ここへ着いたのが午後7時頃になりヘッデンを付けての歩行となったそうだ。
 しかし、その話っぷりから危機感は感じられない。大丈夫かな?。
 今日は、これから出発し、祖母谷温泉で一泊するとのこと。
  
 露天風呂は僕らの貸し切り。
 他の人が慌ただしく歩いている頃に露天風呂とはなんと贅沢なことか。



十字峡前の沢で会ったおじさん
お互い無事着いたと喜び合った




トンネル奥から高熱の湯気が湧いてくる


朝はゆっくり



 テン場へ戻り、ゆっくり朝食。
 テントをたたみ、支度が整った頃にはテン場には他に誰もおらず静かな出発となった。
 ちょうどそのとき、小屋から降りてきた数人がテン場にあるあのトンネルへ入っていった。この人達は、列車に乗るのか?。もしそうならなぜ乗れるのか?。疑問は増すばかり。僕も乗りたいー!。

 しばらく歩くと、道は一気に山肌を登り高度を稼ぐ。
 振り返ると阿曽原温泉小屋の付近が一望できる。温泉からは湯気が立ち上がる。



出発までは良かったお天気



阿曽原温泉小屋の裏側


欅平へ出発


阿曽原温泉小屋全景


急坂の登り始め




昔? 軌道で使われていた線路かな?


  折尾谷の手前にある谷であのおじさんに追いついた。立ち話をしたのが午前6時頃だったので、てっきりかなり先を歩いていると思った。
 このおじさんは40年前まで山歩きをしていたそうだが、その後、山を離れ、再会したのは1年前。 グループだと足が遅いので迷惑をかけるからもっぱら単独で歩いているそうだ。
 笑顔が印象的なおじさん。どうか無事に歩いてほしい。



おじさんと再会した折尾谷手前の沢


折尾谷



 この先すぐに折尾谷。堰堤利用したトンネル通路をくぐり、先へ進むと徐々に水平歩道が現れる。
 岩盤がコの字に堀られ、必要にして最小限度の高さと幅だけ確保されている。しかも崖下の高さが半端じゃない。下の廊下も高かったがこちらが上。カシミールで計ったらだいたい250mくらいあった。
 対岸の大岩壁もすごいスケール!。登られているのかどうかは知らないが、クライマーなら目指したい壁だ。



折尾谷の堰堤トンネル



 




対岸の大岩壁











 
 そして水平歩道の象徴、大太鼓に到着。
 歩道のくりぬき方が特にえぐい。ここは動画を撮りましたので、ぜひそちらを見てみてください。YouTubeに登録しています。





水平歩道の怖さを動画で体感してください
 アイコンをクリック!








 黒部川の谷間の奥に欅平の駅が見えた。ゴールが近い。
 歩いていると汽笛が聞こえてくる。しかし、ここから欅平駅まで3時間もかかった。

  その先に見えたのは志合谷だ。
 欅平から仙人ダムへのトンネル工事で冬場の作業を確保するため、この谷に五階建ての宿舎を建設し、作業員を越冬させた。
 ところが世界的にも珍しい泡雪崩が発生し、吹き飛ばされた宿舎は正面の奥鐘山の岩壁にたたきつけられ84人あまりが死亡するいう大惨事が起こった。
 今、その谷を目の前にしている。ここのどこにその宿舎があったのか、まったくわからないが、見る限りではとても宿舎を建設できるだけの場所は見あたらない(もっと黒部川側の下流のようです)。

 その志合谷は谷の下を大きく迂回するようにトンネルが掘られている。水平歩道名物の志合谷のトンネルに到着。
 ヘッデンを付けて中へはいる。思っていたよりも高さがあり、心配していた頭を打つことはなかった。
 岩に光が当たると表面がきらきらと光る。鉱物の関係なのかな。
 素堀りのままのところあり、鉄で補強しているところあり、120mも続くトンネルを出たときはホッとした。






雪渓が残る志合谷



これから志合谷のトンネルに入ります








  お昼近くになったので、朝食の残りを広げて休憩する。
 目の前の岩壁を見ると、鉄杭が横に打たれていて、上からはワイヤーが垂れている。
 もしかしたら、昔はここに丸太を渡して歩いていたのかもしれない。もし今でもそんな箇所があったら、いくら怖いところ好きの僕でも歩けたかどうか微妙…。
 ちなみに今では隣りにトンネルが掘られている。





ここへ来て撮影する元気も出てきたぶぅーちゃん まだまだ元気なタケさん チーズを頬張る僕


昔にあったと思われる桟橋の跡があった




 
 再び歩き始めて、対岸の大岩壁を目の前にして思い出した。そうだ、ここへ来たら「ヤッホー!」と叫ぼうと思っていたのだった。

 立ち止まり、大岩壁へ向かって腹の底から「ヤッホー!」と大声で叫ぶ。
 こだまは帰ってこなかった。…ん?。隣を見るとぶぅーちゃんが壁にへたり込んで涙目になっている。
 どうやら突然叫んだので僕が落ちたと思ったらしい。驚かせてすんません。(^^;

 しかし、これで驚かせたのがまずかったのか、途中で何もないところを指して「小屋がありますね」とか、突然ペースアップしだして足早に歩き出したり(3分しかもたなかったが(^^;)、情緒不安定な一面を覗かせた。

本人曰く「ランナーズハイです」ということだった。
 このまま放っておいたら崖から飛び立っていたかもしれない。(^^;





「ヤッホー!」に驚いて崩れるぶぅーちゃん













杓子岳・白馬岳方面





 
奥鐘橋が見える


 送電線が歩道に近づく辺りまで来ると、ゴールも近い。
 駅のアナウンスの声や汽笛が頻繁に聞こえる。
 水平歩道からグッと急な下りになり、標高差270mを一気に行く。最後の最後で疲れのピークにある膝、太もも、ふくろはぎ、足首と下半身全部に荷重がかかる。かなり辛い。
 
 そして、何かの建物の赤い屋根が見え、広場が見えた。
 ハァー終わった。タケさんが笑顔で出迎えてくれる。ベンチには一般の観光客が座っていて僕らを珍しそうに見ていた。
 しばらくして、ぶぅーちゃんがおっちらおっちらと足をかばうように階段を下りてきた。





欅平駅前広場に到着 黒部峡谷の案内板を見て歩いてきた道のりを振り返る


  緊張が解けてドッと疲れが…




  早速、帰りの切符を買いに行く。
 心配された整理券は30分後に出発する14時37分発の列車が取れた。時刻案内板(右下)に満員かどうかの識別灯があるということは、やはり時期によっては満員で乗れない列車があるのかもしれない。

 改札が始まり、ホームへ。単線の線路だが慌ただしく回送列車が行き来する。ホームの奥に続く線路は、あの阿曽原温泉小屋への専用軌道と繋がっているそうだ。黒部ダムまで通じるその専用軌道(一部道路)を見学できるツアーもあるでいずれ体験してみたい。




30分ほどの待ち合わせで整理券をゲット!   赤いランプは満席を示す





 
 切符は普通車と特別車のどちらも空いているということだったが、普通車にした。
 これが窓のないパノラマ車で、走り出すと風が冷たく寒い!。冬用のジャケットを着て首まですっぽりチャックを上げてちょうどいいくらい。
 下の廊下と水平歩道でお腹いっぱい渓谷を満喫してきた僕らにとって、列車から見る風景は単調そのもの。しかし、1時間20分ほどの乗車は列車ならではのリラックスした時間を与えてくれた。
 ここから見える山の頂には濃い雲がかかっている。もうあと10分ほどで宇奈月温泉に到着するというところで雨が降り出した。何というタイミング。
 そうなるとあのおじさんが心配になる。無事にたどり着けたのだろうか?。







 
 宇奈月温泉に到着し、車を受け取りに行く。
 そして、温泉。しかし、すでに4時を回り、日帰り温泉を提供しているホテルの温泉もタイムオーバーでどこもだめ。町営の温泉は聞くところによると狭いらしい。
 一つだけ入れるホテルがあると聞きそこへ直行。狭いながらも何とか温泉につかることができた。

 昼食はクラッカーとチーズだったのでお腹はぺこぺこ。
 夕飯を兼ねて、尋ねたのは富山市内にあるブラックラーメンの発祥地「大喜」。
 お二人は食べたことがあるということで訪れたのだが、素っ気ないおばちゃんの態度が印象的。(^^;
 関西の薄味風味とは違いかなり濃い醤油味。シナチクも塩辛い!。でもそれがとても美味しい。チャーシューも大量!。麺は固めの中太麺だがこのダシにはぴったり合っている。
 ここはご飯の持ち込みが可能で、できればご飯がほしいところ。とってもおいしゅーございました。m(__)m
 
 往復ともタケさんの運転でとっても楽させていただきました。






 
 一般縦走路の中でも三点支持の技術と持久力が重要なジャンダルム、不確定要素が強い大山縦走と比べても、このルートは整備されていること、それに全体的に見れば高低差が少ないことも歩きやすいルートだと思います。
 とはいうものの一歩間違えれば怪我ではすまされないルートとも言えるだけに気は抜けません。

 尚、黒部別山谷の雪渓状況や全体のルート状況については、阿曽原温泉小屋のホームページがリアルタイムで更新されていてとても参考になります。



全行程を動画と画像でまとめてみました。