大峰山系 白子谷へ沢登り 


●場 所:白子谷(しらこだに)
●山 域:大峰
●日 時:2000年(H12)10月1日
●天 候:曇り(山頂付近は霧)
●標 高:鉄山 1563m
●地形図:弥山(1/25,000)
●メンバー:BAKUさん、ミ〜ヨンさん、てる



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 本当は今回、前鬼川に沢登りへ行く予定でしたが、前日から雨が続きこの日も曇りのち雨という予報が出ていたこともあり、天気がいい日に120mのナメが見たいという意見で一致したため、前鬼川は見送り白子谷へと変更したのでした。
 しかし、まさかこの変更したことが後々、大変なことになるなんて思いもしませんでした。

 午前5時過ぎに自宅を出発。BAKUさん、ミ〜ヨンさんと合流しBAKUさんの車に乗り換えて一路大峰へ。  前夜の大雨で路面は濡れていたものの、上空は曇り空がたちこめるだけで雨は降らなかった。

川迫川沿いの林道からガスのかかる
鉄山を撮影。


   【8時50分】大川口出発  大川口に車をデポして支度をし出発。やはりというか天気が良くないため登山者、沢登りとも少ない。鉄山は見えず低い位置までガスがかかっている。  林道を少し戻り白子谷の出合あたりで川迫川を徒渉しいよいよ沢登りを開始した。
 前夜あれほど雨が降ったにもかかわらず、水はとてもきれいでこれは意外だった。  入るとすぐにナメ滝8mがかかり、次に8mの滝。ガイドブックに「釜に木が突き刺さっている」とあったが、取り除かれたのか流れたのかすでに木はなかった。これは右側を巻く。  さらに進むと左側に送水タンクがあった。ここから取水してどこへ繋がっているんだろうか?。

川迫川を徒渉し白子谷との合流点へと向かう この谷の象徴でもあるナメから始まる


釜が綺麗な7mの滝 この谷にはそぐわない送水用タンク


 そのあとに斜8m。栗色の花崗岩が滑り台のように丸くくり貫かれたようになっていて釜も小さいながら深くてとてもきれい。  大小さまざまな岩を遡り、ゴーロ帯を抜けるとナメ滝10mが現れた。ここでお二人にわざとモデルになってもらい滝を直登してもらった。登り方はみなそれぞれ違って写真を撮ってみると面白い。中は階段状になっていて沢登りの醍醐味を楽しめる。  

滑り台のような斜8m


思った以上にヌルヌルして滑るので
慎重になる
終始快適な沢登りを堪能できる 小滝に苦戦するミ〜ヨンさん


階段状に登れる斜8m 流水に逆らって登る。快感ンン〜。


再びゴーロ帯になり小滝を快適に越すと、階段状になったナメ40mが見えてきた。ここらで少し休憩。あれこれと終わりのない話が延々と続くので、腰を据えてしまうと日が暮れるまで喋っていそう。(^^;  ここから先は小滝が続いたあとにナメ20mがありその上には二条4mがかかる。ここのナメは一枚岩の花崗岩で岩肌を水が滑るという表現が似合いそう。 本谷とガレ谷の分岐で再び休憩。例えるならモジキ谷の遡行がジェット戦闘機だとすると今回はゆっくりと飛ぶプロペラ機のよう。それほどのんびりとした遡行を楽しめた。(^^)  
 


明るく開けたゴーロ帯を進む ナメが断続的に続く 紅葉にはまだ早いが紅葉すれば
とても綺麗だろうなぁ


苔の緑が気持ちを和らげてくれる



この谷一番のナメ滝 上から見ると一枚岩の
ナメがよくわかる

もう、ドンドン行くミ〜ヨンさん 本流とガレ谷の分岐で再び休憩。この
あたりからガスが出てきた。


谷を詰め上げると広い台地に出た。
辺りは一面、白い霧で覆われていた。
お昼を取ってお腹もいっぱい、遡ってきた白子谷のことなど
語りながら楽しいひとときだったのに、この先…。


ここからはガレ谷を登り途中から尾根にスイッチして延々と続く自然林の急坂をおっちらおっちらと高度を稼ぐ。実にきつい登りであった。  ガレ谷というだけあって、ガレガレの坂で70〜80cmほどの岩を落としてしまうこともあった。BAKUさん間一髪。
>BAKUさんごめんなさい。m(__)m
 このあたりまでくると付近は霧に覆われ、遠くにある木がスーッと現れたりしてかなり幻想的な雰囲気ではあるが、それをのんびりと眺める余裕などなく、やっと腰を据えて落ち着けたのは、弥山から鉄山へ続く稜線上にある香精山へ着いてから。

 【13時20分】鉄山が見渡せる場所
 北側の傾斜が一部緩くなっていて、晴れていれば見晴らしもいいであろう場所があって、ここでお昼を取ることにした。 以前、来たことがあるBAKUさんの話ではここから鉄山はもとより、行者還岳、バリゴヤの頭など大峰の山々が一望できると言うことだったが、今は霧で50m先さえ見えない。

 【14時10分】気が付いたら遭難?
 お昼も取り、あとは降りてからの温泉が楽しみ。しかし、そんな思いが一変した。
 記念撮影も終えたあと鉄山を経由して大川口まで下ろうと、鉄山への道を印したテープを探すが見あたらない。地形図を見ても痩せ尾根から北へ少し向かい東へ尾根が続いている。なのにテープがない。道らしきものもない。
 本当はこの開けた場所から芝生をそのまま下ると鉄山へ続く尾根に乗っかるのだが、この濃霧で目標であった鉄山が見えなかったことと開けた場所だったので、目印になるテープを張っている木がなかったことなどから、わからなくなってしまった。
 40分ほど探したものの見つからない。そしてBAKUさんが弥山へのルートをとることを提案。ミ〜ヨンさんも僕も異存はなかったのでそのルートで決定した。このコースなら緩やかな広い尾根筋を登り切れば、弥山からは奥駆道を歩けばいいと判断したからだ。もちろん距離は鉄山を下るルートの4倍以上かかるが、より安全を期すなら仕方がない。それに今すぐ決断しないと時間がない。

 すぐさま弥山へ向かって登り始める。この道は余り歩かれていないらしく、踏み跡もあいまいでテープがなければとてもわかりにくい。しかもシャクナゲの木枝で行く手を阻まれることしばし。
 それでも修覆山まではなんとか来れた。何故、濃霧の中で確信できたかというと、その辺りまで来たときに一時的に霧が晴れ、麓には鉄山やバリゴヤの頭への尾根、川迫川、南には弥山と八経ヶ岳が並んで見えたからだ。
 今頃になって鉄山が見えたのは何とも皮肉。引き返すことも考えたが、引き返したときに霧が晴れている保証もないため、このまま予定通り弥山へ登ることにした。そして数分の後、やはり展望は閉ざされ、霧に覆われた。つかの間の展望だった。ただ、この一瞬の出来事で位置確認をできたことは、あとあと方向を決める上での自信になった。

 歩いていると八経ヶ岳の上空でヘリコプターがホバリングをしている。最初は弥山小屋への輸送ヘリだと思っていたが、どうも様子がおかしい。結局はこのヘリは大日岳付近で遭難していた男性二人を捜索していたヘリだったが、この時正直、僕らが救出してほしいと思ったくらいだ。

 修覆山から先は倒木が多く道もとぎれとぎれで、しかもそれまでの道とは違い、台地状になるためコンパスを見ていないと方向感覚が麻痺するほど、どこを見ても同じ景色が見えた。
 そんな中、歩いているといつの間にかテープを見失うというパターンを何度か繰り返しているうちに、本当に道に迷ってしまった。 どうやら獣道に入り込んでしまったようだった。
 戻るにも戻れず木々が開けた場所で、3人呆然と立っていた。あたりは50m先ほどしか視界がなく、どこをみても風景は同じに見えた。これが遭難するということなのか?と心の中で呟いた。この状況で「遭難」という言葉は出せない。言えば遭難していることを認めてしまうことになるからだ。認めたくはない。それほどせっぱ詰まっていた。二人とも同じだったと思う。必然的に会話が少なくなり押し黙る時間が増える。疲れと不安がそうさせていた。
 ただ、万が一のことを考えていなかったわけではない。最悪、ビバーグも頭に入れていた。食料もポケットシートもあったし。

 とにかくじっとしていても仕方がない。コンパスの示す南へ向かおうということになった。先ほど一瞬ではあったが弥山と八経ヶ岳が見えたことで、位置的にも修覆山まで来たことは間違いないと確認できていたからだ。とすればあとは南へ向かうだけだ。
 倒木でとぎれとぎれになる道をコンパス片手に、半信半疑でどんどん南へ向かうと… しばらく歩くと赤いテープがあったー!。 今度は絶対にテープを見逃さず進む。
 低いモーター音が修復山辺りからずっと聞こえているが、一向に音が大きくならない。濃霧の中では音が遠くまで届くと何かの本で読んだことがあるが、まさかこんなときに身をもって知るとは思ってもみなかった。
 が、そんな音が本当に大きくなってきた。弥山小屋が近い。そして白く濁った景色の先に大きなものが…。弥山小屋だ!。助かった!\(^o^)/ 嬉しいやらホッとしたやら、とにかくこれで助かったと心から思った。  小屋で主人と、遭難者の捜索に来ていた人が出てきた。人の顔を見ると余計ホッとする。(^^)

 この時点では大日岳で遭難していた人は見つかっておらず、翌日見つかることになるのだが、この人達は行者還トンネル西口を午前2時過ぎに出発し前鬼へ当日に着く予定が、奥駆道を弥山、八経ヶ岳、孔雀岳、釈迦ヶ岳まできて大日岳あたりで道に迷い遭難したそうだ。
 僕らが歩いてきた修覆山の周辺は倒木が多く道も不明瞭なため、昨年の春にも道に迷った遭難者が出て一人亡くなっているらしい。この道は歩かないでほしいとご主人が言っていた。

【17時過ぎ】弥山小屋出発
 あまりゆっくりもしていられない。これから奥駆道を歩いて行者還トンネル西口へと向かわなければ行けない。
 日はどんどん暮れ、1,600mのピークを通る頃にはヘッデンがいるようになり、足下が暗くスピードも落ちてくる。不意に右奥でガサガサ!という音が聞こえた。目をやると何やら大きな動物が立ってこちらをうかがっている様子。熊か?。と思うが逃げていったので確認できなかった。鹿であってほしいと願うばかり。(^_^;
 奥駆道出合まで来たときはドップリと日は暮れて真っ暗け。ヘッデンだけでこの坂を下るのはきつかった。(>_<) ただ、良く踏まれた道なので、なんとか降り立つことができたが、これが曖昧なら二次遭難になるかも。
 なんとか、行者還トンネル西口まで降りてきたらもうヘトヘト。道路に座り込んでしばしの休憩。空を見上げると、こんなに遠回りに歩かせた天気も、そんなことがあったの?と言わんばかりの満天の星空。
 あとは長い林道歩きが待っていましたが、今までの苦労と比べれば安全な道を歩くだけなので快調に飛ばして無事、大川口まで戻れたのでした。
 今回もBAKUさんが手を差し伸べて握手をしてくれました。今回は特にこんな状況を無事、一緒に乗り越せたこと、そして帰れたことに、お互い感謝の気持ちを込めてがっちり握手を交わしたのでした。一つ間違えれば、こうして文章を書いていることはなかったのですから。
 山をやっていれば、いずれはこんなことが訪れるだろう思ってはいましたが、ガスに巻かれると思っていた以上に状況を認識することが難しくなることがわかりました。それに対応するには地形図を読みこなせる力を養うほかはないことを、今回改めて思い知らされたというわけです。
 今年、最後の沢登りは波乱のまま終わろうとしています。来年はこれを教訓にしたいものですね。(^^ゞ

弥山小屋でビールを片手に安堵の休息を味わう